柔軟関節ソフトロボットアームの研究

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 従来のロボットアームは,手先位置精度を重視しているため高剛性な部材を組み合わせて構成されている.そのため,不慮の接触事故により周囲の環境やロボット自身が損傷することを防ぐため,産業用ロボットは隔離された場所で作業を行っている.しかし近年,人や環境に近い空間で接触を伴う作業をロボットにより実現することへの要求が高まってきている.そのような場面でロボットが活躍するには,人を含む周囲の環境の安全の確保を第一に考える必要がある.衝突や接触時の安全性を確保するには,機械的な柔らかさが重要な要素であると考えられる.そこで,機械的な柔軟性を関節に持つロボットJ-ARMを開発した[1]-[4].J-ARMは,阿部らによって開発された普及型サーボ関節モジュール[5]をもとに,減速機の出力軸に線形ばねを挿入することによって,柔軟関節機構を実現している.J-ARMの外観を図1に示す.

図1 J-ARMの外観

 この柔軟関節ロボットアームは,モジュール単位で開発が進められた.モジュール単位で開発することで,部品の共通化,開発時間の短縮,製造コストの軽減など開発コストが抑えられることが期待できる.ソフトサーボモジュールの外観を図2に示す.また、ソフトサーボモジュールの組立図を図3に示す.

図2 ソフトサーボモジュールの外観

図3 ソフトサーボモジュール組立図

 ソフトサーボモジュールの特徴の一つに差動機構を採用していることが挙げられる.これにより,曲げ方向およびねじり方向 の2自由度を実現している.またこれとかさ歯車を併用することにより,バランス良くモータを配置することができる.図4にソフトサーボモジュールの機構を示す.各関節軸にかかるトルクは,差動機構部を通りかさ歯車を介して各捻りコイルばねに伝えられる.伝えられたトルクによりばねが弾性変形し,その変位がかさ歯車から 差動機構を通して各関節の回転変位となる

図4 ソフトサーボモジュール機構

 J-ARMの制御用コンピュータにはリアルタイムOSであるVxWorksをOSとするPC/AT互換機(以下VxWorks PC)を使用している. VxWorks PCでは,リアルタイム性が要求される指令値を計算するサーボタスク,ソケット通信によって目標軌道を受け取り バッファリングする目標軌道タスク,データをLinux PCにソケット 通信によって送信するソケットタスクが実行される.リアルタイムOS VxWorksの利点を活かし,これら複数のタスクを優先度にしたがって処理している.サーボタスクは,サンプリングタイムごとに確実に実行されるように,優先度が一番高く設定されている.残りの時間で目標軌道タスク,ソケットタスクを実行する.図5にタスク遷移図を示す.

図5 タスク遷移図

 J-ARMに本研究室でフレキシブルリンクマニピュレーターに使用している振動抑制制御[6], [7]を適用し実験を行った.実験結果を図6に示す.

(a)振動抑制制御なし

(b)振動抑制制御あり

図6 振動抑制評価実験

参考文献

  1. 桂島航,川口順央,阿部幸勇,内山勝: 6自由度柔軟関節ロボットアームの開発及び評価、ロボティクス・メカトロニクス講演会'99講演論文集,日本機械学会[No. 99-9] (1999/6/11-13), 2A1-47-073 (1)-(2).
  2. 内山勝: ソフトロボティクス、日本ロボット学会誌, 17-6 (1999/9), 756-757.
  3. 川口順央,阿部幸勇,内山勝: 6自由度柔軟関節ロボットアームの高精度高速位置決め制御、第17回日本ロボット学会学術講演会予稿集,(1999/9/9-11), 189-190.
  4. 桂島航,菊池秀則,阿部幸勇,内山勝: 関節の柔らかいロボットアームの設計・製作,第16回日本ロボット学会学術講演会予稿集,(1998/9/18-20), 963-964.
  5. 阿部幸勇,有山航太,内山勝,近野敦,井上博允: 普及型サーボ関節モジュールの開発,日本機械学会[No. 97-22] ロボティクス・メカトロニクス講演会'97講演論文集,(1997/6/7-8), 271-274.
  6. 近野敦,内山勝,貴答豊,村上真人: 加速度指令による三次元フレキシブルマニピュレータの振動抑制制御,日本ロボット学会誌,12-8 (1994/11), 1166-1174.
  7. A. Konno and M. Uchiyama: VIBRATION SUPPRESSION CONTROL OF SPATIAL FLEXIBLE MANIPULATORS, CONTROL ENGINEERING PRACTICE, A Journal of IFAC the International Federation of Automatic Control, 3-9 (1995/9), 1315-1321.

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