双腕宇宙ロボットの遠隔操作実験システム

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 宇宙開発において,宇宙ロボティクスは最も重要な技術のうちのひとつである. 特に,宇宙飛行士の代わりに作業のできる完全自律型宇宙ロボットの開発が望まれているが, 現時点での技術レベルでは完全自律型宇宙ロボットを開発することはできない. そこで,ある程度の自律性を持った宇宙ロボットをオペレータが遠隔操作するという技術が重要となってくる .現在,宇宙船から宇宙ロボットを遠隔操作する技術はすでに実用化されている. しかし,宇宙において宇宙飛行士の人員は非常に限られており, 宇宙船からの遠隔操作だけでは効率的に宇宙開発を進めていくことができない. そこで,地上から宇宙ロボットを遠隔操作する技術を確立することが, 将来の宇宙ミッションにおいて需要な要素となる.
 我々は,このような背景から双腕宇宙ロボットの遠隔操作システムを構築し, 地上から軌道上の宇宙ロボットを遠隔操作するための研究及び技術開発を行ってきた[1]-[8]. 図1に本システムの外観を示す.宇宙側のスレーブシステムと地上側のマスタシステムに分けられる.

図1 双腕宇宙ロボット遠隔操作システム(構成図)

モデルベースト遠隔操作システム

 宇宙での作業を地上から遠隔操作で行うには, 通信時間遅れや作業環境を直接見ることができないという問題がある. そのため,オペレータは「ムーブアンドウェイト」を強いられ,作業効率が悪くなる. 本研究ではモデルベーストな遠隔操作システムを構築することで,この問題に対処してきた. コンピュータグラフィックス(CG)を用いた,仮想環境を用いることで操縦者は 時間遅れを気にすることなくロボットを操作可能となる. 図2に仮想環境を示す.ソリッドモデルでロボットの予測表示を行い, ワイヤーフレームモデルで実環境のロボットの動きを提示する. 図3に複数の視点から表示した例を示す.視点変更機能を備え, 正面と左右からの表示に加えて,カメラヘッドの視点からの映像も表示可能である.

図2 仮想環境

(a)左から

(b)正面

(c)右から

(d)右カメラヘッド

(e)左カメラヘッド

図3 別の視点からの仮想環境の表示

トラス構造物組立作業

 宇宙ロボットに要求される作業のひとつとして, 軌道上のトラス構造物の組立がある. 本研究室では,これまでにトラス構造部材の組立の際に必要な接続および分離作業実験や, トラス構造物の組立作業実験を行った[9]-[11]. トラス構造物の組立作業実験は実際の宇宙を想定し,通信時間遅れあり,操縦者の目視なしの環境で行った. 操縦者は実環境を見ることが出来きず,カメラと仮想環境を見ながら操縦を行う. 組立作業のうち,手動による操縦では困難な作業はロボットが自動で行い, 作業の効率化を図っている.図4に実験の様子を示す.以下の手順で作業を行った.

  1. 長手パイプの把持:スレーブアームを操作し,トラス構造部材を把持可能な位置にアーム手先を移動させ,ハンドを閉じて把持を行う(図4(a)).
  2. 長手パイプの接続:手先を移動させ,各トラス構造部材の中心軸を自動的に合わせる.その後,軸方向以外の運動を拘束し,遠隔操作により接続を行う(図4(b)).
  3. 三角フレームの把持:双腕で三角フレームを自動的に把持を行う.(図4(c)).
  4. 三角フレームの接続:双腕協調制御により三角フレームを把持し,移動させる.トラス同士の軸合わせを自動で行い,軸方向以外の運動を拘束し,遠隔操作により接続する.(図4(d))

(a)

(b)

(c)

(d)

図4 トラス構造物組み立て実験

実環境[mpg](9.74MB) 仮想環境[mpg](9.74MB)

実環境[wmv](7.00MB) 仮想環境[wmv](7.10MB)

特異姿勢回避支援システム

 冗長マニピュレータを遠隔操作する場合,オペレータが特異姿勢を認識することは難しく, 知らずに近付いてしまう可能性が高い.冗長性を利用して自律的に特異姿勢を回避する方法があるが, 回避時の腕姿勢によっては障害物があった場合,リンクと接触する危険性がある. そこで特異姿勢近傍でマニピュレータを停止し,特異姿勢回避時の腕姿勢を事前にオペレータに 提示する特異姿勢回避支援システムを構築した[12]-[14].
 構築した特異姿勢回避支援システムの評価実験を行った.図5に実験の様子を示す. このシステムは特異姿勢近傍に入り,スレーブアーム(SM)を停止させる(図5(b)).次にワイヤーフレームモデル(WFM)で特異姿勢回避を行った時の姿勢を提示する(図5(c)). 特異姿勢回避中の姿勢が障害物と接触しないことを確認したらSMをWFMの腕姿勢まで自動的に移動する(図5(d)).

(a) Move SM

(b) Around singularity

(c) Move WFM

(d) Move SM to WFM

図5 特異姿勢回避システム

特異点回避[mpg](7.75MB)

参考文献

  1. 尹祐根,高橋三恵,鎌田大輔,妻木勇一,内山勝:双腕宇宙遠隔操作実験システムの構築,第16回日本ロボット学会学術講演会予稿集,(1998/9/18-20), 1343-1344.
  2. W.K. Yoon, Y. Tsumaki, and M. Uchiyama: An Experimental System for Dual-Arm Robot Teleoperation in Space with Concepts of Virtual Grip and Ball, Proceedings of the Ninth International Conference on Advanced Robotics ('99 ICAR), Tokyo, Japan, (1999/10/25-27), 225-230.
  3. W.K. Yoon, Y. Tsumaki, and M. Uchiyama: An Experimental Teleoperation System for Dual-Arm Space Robotics, Journal of Robotics and Mechatronics, 12-4 (2000), 378-384.
  4. 立原周一、伊能寛、鷲野誠一郎、佐藤大祐、近野敦、内山勝: 2台のハプティックインタフェースを使用した双腕宇宙ロボットの遠隔操作実験システム、ロボティクス・メカトロニクス講演会'03講演論文集、日本機械学会[No. 03-4] (2003/5/23-25), 2P1-2F-C4(1)-(2).
  5. 鷲野誠一郎、佐藤大祐、内山勝:遠隔操作双腕ロボットによるトラス構造物部品接続実験、ロボティクス・メカトロニクス講演会'04講演論文集、日本機械学会[No. 04-4] (2004/6/18-20), 1A1-L1-19(1)-(2).
  6. 古川州之、佐藤大祐、内山勝:視覚に基づく作業補助機能を用いた双腕ロボットの遠隔操作、日本機械学会東北支部第40期秋季講演会講演論文集、 [No. 041-2], (2004/9/17), 209-210.
  7. 鳥谷昭之、山崎峻一、伊勢紘人、佐藤大祐、内山勝:双腕宇宙ロボットによる軌道上作業シミュレータの開発、ロボティクス・メカトロニクス講演会'05講演論文集、日本機械学会[No. 05-4] (2005/6/9-11), 1P2-S-055(1)-(2).
  8. 山崎峻一、佐藤大祐、内山勝: 2台のハプティックデバイスにより遠隔操作される双腕宇宙ロボットの物体把持作業における双腕制御遷移手法、第6回SICEシステムインテグレーション部門講演会(SI2005)講演論文集、 (2005/12/16/-18), 391-392.
  9. 木村啓志、佐藤大祐、内山勝:遠隔操作双腕宇宙ロボットによるトラス構造部材の接続・分離作業、第7回SICEシステムインテグレーション部門講演会論文集、 (2006/12/14/-17), 1191-1192.
  10. 木村啓志、廣瀬健治、佐藤大祐、内山勝:遠隔操作双腕宇宙ロボットによる組立を考慮したトラス構造物の設計と部材組立作業実験、ロボティクス・メカトロニクス講演会'07講演論文集、日本機械学会[No.\ 07-4] (2007/5/10-12), 2P1-G07 (1)-(4).
  11. 早川允規、高橋大樹、佐藤大祐、近野敦、内山勝:遠隔操作双腕宇宙ロボットによるトラス構造物組立実験―視覚を用いた部分自動化―、 第8回SICEシステムインテグレーション部門講演会論文集、(2007/12/20--22), 409--410.
  12. 原景子、佐藤大祐、内山勝:遠隔操作双腕ロボットの特異姿勢回避支援システムの構築、第7回SICEシステムインテグレーション部門講演会論文集、 (2006/12/14/-17), 572-573.
  13. 原景子、佐藤大祐、内山勝:遠隔操作双腕ロボットの協調制御時における冗長軸への角速度指令による特異姿勢回避、ロボティクス・メカトロニクス講演会'07講演論文集、日本機械学会 [No.\ 07-4] (2007/5/10-12), 2A1-B01 (1)-(4).
  14. M. Hayakawa, K. Hara, D. Sato, A. Konno, and M. Uchiyama: Singularity Avoidance by Inputting Angular Velocity to a Redundant Axis During Cooperative Control of a Teleoperated Dual-Arm Robot, Proceedings of the 2008 IEEE International Conference on Robotics and Automation, Pasadena, California, USA, (2008/5/19-23) (accepted).

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